2014年05月27日

知識の三種

 大略すれば、知識には三種ある。
 第一は、読んだり聞いたりすることによってうるものである。われわれはこれを記憶して、平素重要な所有物として持っているもので、いわゆる知識の大部分はこの種のものである。われわれは地球上をくまなく歩きまわって、親しくこれを調査する訳にはゆかない。ゆえに、世界の知識については、他人が備えてくれた地図に頼る。第二の種類の知識は、科学的と普通いわれているものである。観察と実験・分析と推理の結果である。それは前者より強固な知識を持っているが、ある程度、体験的で経験的なところがあるかであろう。第三の種類の知識は直覚的な理解の方法によって達せられるものである。第二の形態の知識を重んずる人にしたがえば、直覚的な知識は事実に確実な基礎を有せぬから、あまり絶対的な信頼を置くことはできぬという。しかし事実としては、いわゆる科学的知識は完璧なものではなくて、それ自身限界性を有するものであるから、異変、とくに個人性異変の起った場合には、科学と論理はかねて貯えておいた知識と計較を利用する隙がない、記憶している知識だけでは役に立たぬ。かかる場合には、精神はあまり咄嗟なので過去に貯蔵した記憶の一切を喚起することはできないからである。しかるに一方、直覚的知識はあらゆる種類の信仰、とくに宗教的信仰の基礎を形成しており、最も能率的に危機に応じ能うのである。(鈴木大拙『禅と日本文化』8-9頁)
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2007年09月25日

哲学塾に名著誕生

手が出そうになるけど、読んでるヒマなし…。

双書哲学塾】(岩波書店)

歴史を哲学する(野家啓一)
もしもソクラテスに口説かれたら―愛について・自己について(土屋賢二)
〈畳長さ〉が大切です(山内志朗)

【名著誕生】(ポプラ社)

マルクスの「資本論」(著:フランシス・ウィーン、訳:中山元)
・ダーウィンの「種の起源」(著:ジャネット・ブラウン、訳:長谷川 眞理子)
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2007年03月20日

書店員さんが自腹で買う本

仕事で書店をハシゴ。↓の本、書店員さんも自腹で買ってるそうです。おーこわっ。


オンナの建前⇔本音翻訳辞典(日本女性言語学会・扶桑社)
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2007年03月19日

水はなんにも知らないよ

水はなんにも知らないよ(左巻健男・ディスカバー携書)


「新書」ならぬ「携書」登場。「携書」はともかく、書名のタイトルセンスは好きです(笑)。中身もよさげなので、買い。
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2006年05月03日

『貧困の終焉―2025年までに世界を変える』

貧困の終焉―2025年までに世界を変える
ジェフリー サックス著/鈴木主税、野中邦子訳/早川書房

不勉強にもこの著者のことは知らなかった。
著者紹介には、次のようにある。

経済学者で国際開発の第一人者。1980年ハーバード大学博士号取得後、同大学経済学部助教授となり、1984年には29歳の若さで教授となる。20年間ハーバードに所属し、同大学国際開発センター所長を務めた。現在は、コロンビア大学地球研究所所長。また途上国政府や世界銀行ほか各国際機関のアドバイザーを務めており、開発途上国を支援するために発足した国連ミレニアム・プロジェクトにおいては、同教授がコフィ・アナン事務総長の依頼を受け、プロジェクトの長を務めた。

もともと国際金融を専攻していた著者は、自分の教え子だったボリビア人学生から手紙をもらったことがきっかけとなって、ボリビアの経済顧問に携わることになった。ここから著者の「臨床経済学者」としてのキャリアがスタートする。

貧困国の経済的現実との格闘を記述したくだりも迫力十分だが、本書はまず「貧困」に対する誤解をただすためにこそ読まれたい(特に反グローバニズムとか騒いでる方々)。

以下、引用。

「まず最初に、これだけははっきりさせておきたい。金持ちが富を蓄積するには、貧乏人がますます貧乏にならなければいけないと考える人は多い。(中略)このような説明は世界総生産がつねに一定であれば理にかなっていて、豊かな地域の増加分と貧しい地域の減少分がほぼ同じになるだろう。ところが現実は大違い。(中略)近代経済で肝心なのは、ある地域から別の地域への富の移行――力によるにしろ、別の方法によるにしろ――ではなく、むしろ世界総所得の全体的な増加である」

「反グローバル化運動がめざすべきは、熱心なとりくみと道義心のすべてをグローバル化推進運動に注ぎこむことではないだろうか。ただし、それは貧困層への援助、地球の環境問題、民主主義の普及を目的としたグローバル化でなければならない。それは啓蒙思想が支持したグローバル化――民主主義、多国間協調主義、科学とテクノロジー、人間の欲求を満たす経済システム――である。いわば「啓発されたグローバリゼーション」といってもいい。


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2006年02月08日

仏教vs.倫理

『仏教vs.倫理』(末木文美士・ちくま新書)

コラムニストのK・O氏の斜め読み情報によれば、「近年、ベスト3に入る名著の予感」とのこと。今日から熟読します。ほんとは、こーゆー人文方面もR25でとりあげたいんだけど、なかなか…。

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2006年02月03日

「みんなの意見」は案外正しい

という本を読み始めているんだけど、これがすこぶる面白い。

著者も書いているように、人間って個人では理性的な判断ができるのに、集団になると、トンデモな方向に走り出す、というのはよく言われることだ。まあそうだよなと僕なんぞも思っていた。

ところがどっこい、本書は「そんなに集団の知恵をバカにするもんじゃありませんよ」と、僕らの先入観に真っ向から異を唱える。ある認知実験によれば、参加者の平均値が最も正解値に近いという結果が出ているし、グーグルの検索も集団の知恵を信頼して出来上がっているシステムだ。こんな例を織り込みながら、著者は通説に反し、"The Wisdom of Crowds"を擁護するわけだ。

ここまでなら、「そういう考え方もあるよね」なのだけど、著者もクレージーな集団性というものがあることは認めている。そこでどうやら話は、「では集団の知恵がうまく働くにはどうしたらよいの?」という方向に進んでいく気配(まだ全部読んでないので)。

邦訳にも感心した。この「案外」というのがすごくよく効いていて、原題よりも本書の主張を上手に伝えている。

「俗論を斬る」みたいな本は、たしかに面白いし、僕も好きだ。でも、それがゆきすぎると、何事においても疑心暗鬼になったり、裏の裏ばかり読むようになったりで、それはそれで不健康だ。ぼちぼち、「その先」を考えなきゃいけない。「俗論はくだらん」という俗論を斬る本書にそのヒントがあるように感じた次第。

「みんなの意見」は案外正しい
ジェームズ・スロウィッキー著/ 小高尚子訳/角川書店

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2005年10月17日

最近買った本とか。

たまには最近というか、ここ2〜3ヶ月で買った本、読んだ本など。

『QJ(クイックジャパン)』Vol.62
→山下達郎とサンボマスター山口隆との対談。買いです。

ナショナリズムと宗教』(中島岳志・春風社)
→次のエキサイトブックスに登場いただきます。『ヒンドゥー・ナショナリズム―印パ緊張の背景』(中公新書ラクレ)、『中村屋のボース』(白水社)ともどもオススメ。あわせて『インド日記』(小熊英二・新曜社)も。

踊る大捜査線に学ぶ組織論入門』(金井寿宏、田柳恵美・かんき出版)
→お仕事用。いい本です。

アースダイバー』(中沢新一・講談社)
→この人のなかで、一番読みやすいかも。資本主義うんぬんの話を割り引けば、面白い本です。

クビキリサイクル』『クビシメロマンチスト』(西尾維新・講談社)
→遅まきながら。こりゃ売れるのもむべなるかな。ハマりました。

ポストモダンの思想的根拠』(岡本裕一朗・ナカニシヤ出版)
→現代思想入門企画の参考書として。『異議あり! 生命・環境倫理学』ほどのインパクトはないものの、整理としては勉強になったし、文章もこなれている。ただ、不勉強のせいもあるが、どうもこの管理云々の話というのはピンと来ない。『安全神話崩壊のパラドックス』が積ん読だし、このへんを読んでからじっくり考えたい。

八月十五日の神話』(佐藤卓己・ちくま新書)
→『言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(中公新書)に負けず劣らずの傑作。

アメリカの高校生が学ぶ経済学』(WAVE出版)
→アメリカはおそろしかとこですばい。日本の政経とはレベルが違いすぎ。たまげました。

日本とドイツ 二つの戦後思想』(仲正昌樹・光文社新書)
光文社は、新書界でいちばんやんちゃ。節操ないんだけど、企画の角度はシャープだなぁ。この本もその好例。ドイツの思想をざっと見渡すのに最適では。関係ないけど、『下流社会』の初動はさおだけ以上とか。

本業』(水道橋博士・ロッキング・オン)
→ブックレビュー修業。

以下、積ん読中。
「資本」論』(稲葉振一郎・ちくま新書)
編集者・執筆者のための秀丸エディタ超活用術』(西谷能英・翔泳社)
中学生のための社会科』(吉本隆明・市井文学)
退屈の小さな哲学』(ラース・スヴェンセン・集英社新書)
笑いと哲学の微妙な関係』(山内志朗・哲学書房)
テヅカイズデッド』(伊藤剛・NTT書房)

まだ忘れているのもありそうだけど、とりあえずこんなとこで。

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2005年06月11日

原因と結果の迷宮

 以前から気になっていた『原因と結果の迷宮』(一ノ瀬正樹・勁草書房)を読み始める。つっても、主たる関心は企画のネタ探というか頭の体操。「因果関係」というのは哲学上の大トピックであると同時に、じつは知覚論などよりも、実社会とも接点が見つかりやすいんじゃないかという目論見であります。だって、ほらビジネス書にも『原因と結果の法則』とかあるし。

 とはいっても、哲学書の『原因と結果の迷宮』とビジネス書の『原因と結果の法則』とでは、ベクトルは正反対なのだ(厳密にいうと、「迷宮」はそんな単純ではないがとりあえず話の手前そうさせていただく)。

 『原因と結果の法則』に代表されるビジネス自己啓発の基本スタンスは「自己責任」。つまり、自分の「意志」や「思い」こそが「原因」の身分とされ、環境や人格、健康などなどはすべてその「結果」として位置づけられるわけだ。

 一方で哲学では、どう考えるのか。たとえば「迷宮」の出発点はこうである。
自分とは、徹頭徹尾、自分ならざるものによって導かれ、決定付けられている存在なのであり、自由な主体性などというのは、視野をあえて狭く限ったときにのみ現れる幻覚にすぎない

 ここでは、自分ならざるものが「原因」の身分をもち、自分は「結果」として捉えられることになる。もちろん哲学ではそんな単純な話で終わらず、先のビジネス書的な因果概念も含めて、原因と結果のいたちごっこをめぐり、喧々諤々を繰り返している。たとえば、ある種の哲学は、「結果は原因に先立つか」なんていう証明合戦をおこなっていて、驚くことに「結果は原因に先立つということは不可能だ」(つまり、原因は結果に必ず先行する)という(一般人にしてみれば当然とも思える)主張は哲学では成立しないのである。

 そうした喧々諤々を楽しみたい方は、『原因と結果の迷宮』を読んでいただくとして、しがないフリー編集者としては、もうちょいこの因果概念ってやつを、面白くてタメになる形で一般書レベルに落としこめないものかと思うわけです。
 
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2005年05月03日

にわか現代思想のお勉強

今年の後半は、現代思想入門本を編集する予定だ。

現代思想といえば、別冊宝島の『わかりたいあなたのための現代思想・入門』が、僕らの世代では定番の1冊だが、今回は「その後」をやろうという企画である。

『わかりたい〜』は、現象学〜実存主義〜記号論〜構造主義〜ポスト構造主義とほぼ時系列に構成されていて、よくも悪くも以後の現代思想入門本はこのヴァリエーションとして作られていった。おフランス中心の現代思想である。

でも思想の風景もずいぶん変わったんじゃないだろうか。

たとえばロールズ、ノージックといった政治哲学方面は、従来の現代思想入門からはスッポリ抜け落ちているけど、現在だったら欠かせない項目だろう。『〈帝国〉』あたりも当然入ってくるだろうし。

構造と力』が出たのが1983年。『わかりたい〜』が出たのは1984年。ニューアカ真っ盛りの時代だからこそ、売れた分野ではある。

ただ、やりようによっては面白いもんができそう、という予感はある。だって、現在のほうが混沌としていて、素人にはアクセスしがたいんだもの。

そんなわけで、サイトーもリハビリとして、ジジェクの『イデオロギーの崇高な対象』とか読んでます。ひさしぶりにこの手の本を読むのは、とっても楽しい。

現在はまだ企画を煮詰めているとこ。プロジェクトの進行も随時、このブログで報告していく予定なので、乞うご期待!



posted by saitoshokai at 22:55| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする