2005年06月11日

原因と結果の迷宮

 以前から気になっていた『原因と結果の迷宮』(一ノ瀬正樹・勁草書房)を読み始める。つっても、主たる関心は企画のネタ探というか頭の体操。「因果関係」というのは哲学上の大トピックであると同時に、じつは知覚論などよりも、実社会とも接点が見つかりやすいんじゃないかという目論見であります。だって、ほらビジネス書にも『原因と結果の法則』とかあるし。

 とはいっても、哲学書の『原因と結果の迷宮』とビジネス書の『原因と結果の法則』とでは、ベクトルは正反対なのだ(厳密にいうと、「迷宮」はそんな単純ではないがとりあえず話の手前そうさせていただく)。

 『原因と結果の法則』に代表されるビジネス自己啓発の基本スタンスは「自己責任」。つまり、自分の「意志」や「思い」こそが「原因」の身分とされ、環境や人格、健康などなどはすべてその「結果」として位置づけられるわけだ。

 一方で哲学では、どう考えるのか。たとえば「迷宮」の出発点はこうである。
自分とは、徹頭徹尾、自分ならざるものによって導かれ、決定付けられている存在なのであり、自由な主体性などというのは、視野をあえて狭く限ったときにのみ現れる幻覚にすぎない

 ここでは、自分ならざるものが「原因」の身分をもち、自分は「結果」として捉えられることになる。もちろん哲学ではそんな単純な話で終わらず、先のビジネス書的な因果概念も含めて、原因と結果のいたちごっこをめぐり、喧々諤々を繰り返している。たとえば、ある種の哲学は、「結果は原因に先立つか」なんていう証明合戦をおこなっていて、驚くことに「結果は原因に先立つということは不可能だ」(つまり、原因は結果に必ず先行する)という(一般人にしてみれば当然とも思える)主張は哲学では成立しないのである。

 そうした喧々諤々を楽しみたい方は、『原因と結果の迷宮』を読んでいただくとして、しがないフリー編集者としては、もうちょいこの因果概念ってやつを、面白くてタメになる形で一般書レベルに落としこめないものかと思うわけです。
 
posted by saitoshokai at 09:22| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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